プッチーニのオペラ、ジャンニ・スキッキGianni Schicchi(1918)の中で、結婚を誓い合うラウレッタとリヌッチョは、お互いの家族の諍いで結婚できない自分達の境遇を嘆く。
Non ci sposeremo per il Calendimaggio!!
(カレンディマッジョに結婚できない!)
Calendimaggioとは、月の初めcalendaeと5月を意味するmaggioが示す通り、5月になると春の到来をお祝いします。今も有名なのはアッシジかな?オペラの舞台のフィレンツェ(トスカーナ)周辺でも大きな祭りがあったようで、現代ではフィレンツェ五月音楽祭は街のシンボルでしょう。
5月の特別な華やかさは、その季節を見たことがない僕にとっても特別に思える程、ヨーロッパのどこの国、どの時代でも様々な文化で窺い知れる。
僕の見た、今年のCalendimaggio、つまり5月の初めは美しかった。
東京の高尾にある霊園まで自転車で行ってきました。そこに至るまでの街路樹も遠くに見える山々も新緑で彩られ、高尾から霊園までの林を抜ける道ですら、明るく、透明度の高い緑の光と、山吹や菜の花の黄色が眩しい。
シャンソン歌手の髙木椋太さんが亡くなって、三回忌を迎えた。COVID-19 に倒れたことを数日経って知った。この頃、この病気で亡くなった人達は世界共通で、友人達も、いや家族でさえも集うことができず、2年経った今でもその人達の影をどこかで見てしまうのではないかしら。会えなくなった人には、いつでも同じような気持ちになるのだけれど、寂しさが野晒しにされたようでね。いけないのです。
一時期流れた誰かの歌で、「そこに私はいません」と聞きますが、そうとは分かっていても、既に誰か参った後の、色とりどりの花に飾られた墓の前に立つ。
墓石を洗った水が見せる風、豊満な緑色の香り、朗らかな鶯たちの歌。まだ残る菫の紫をよけて踏む、音のない足どり。
僕の特別な5月は、それは永遠でしょう。
誰もが讃えたように、こんなにも美しいのだから。