東京の週明けはまた少し冷えるそうだが、立春の今日は春を迎える呼吸が聞こえる暖かさがあった。
ソロのコンサートまでちょうど1ヶ月となり、ピアノとの合わせも回を重ねひとつひとつの曲の色が濃くなってきた。フォーレの歌曲は彼の初期のものを選んだのだが、そのシンプルな美しさにもっと寄り添っていきたい。
その前に本番を迎える、東京二期会公演ヴァーグナー作曲の歌劇『ローエングリンLohengrin』に僕は合唱団の1人として参加している。稽古は佳境をむかえ、指揮者の準メルクル、演出家の深作健太を先頭に21日の初日に向かって走り抜ける。
フランスの作曲家ガブリエル・フォーレ(1845〜1924)は、ヴァーグナーのオペラを観劇しにドイツまで足を伸ばしたという。1879年から3年間、ドイツ各地へ向かい、今僕が取り組んでいる『ローエングリン』も1881年に観劇している。(“フォーレとその歌曲”河本喜介著、音楽之友社参照)
そういった経験がどれほど作品に影響しているかはまた別の話として、フォーレが聴いた音楽を”今”演奏しているという繋がりにとても面白さを感じている。
オペラに浸ると歌曲の中にある心の動きを強く感じるし、歌曲に浸るとオペラの大きな音楽の中に走る無数の血管を感じる。どちらも楽しさがあり難しさもあるのだけれど、歌曲とオペラのその両方を行き来して味わう事はとても幸せな事と思う。