雨の日

雨の日は好きだ。

傘に打つ雨の音が、隣りを歩く人のそれと重なって分からないくらいの強さが丁度良い。

雨が降る前に立ち込めた湿度が洗い流されて、少し汗ばんだ肌に雨粒が溶け合うくらいが良い。

雨の日は、気づかずに通り過ぎたくちなしのかおりを届けて、見つけた小道にきれいな青色の紫陽花と深い緑の葉があるのを教えてくれる。

雨の夜は耳元に静かな絵画を描くようで、ベランダの手すりから落ちる雨音、隣の庭木に打つ雨音、ずうっと高いところから流れてくる雨のままの音。

機械式の時計のリズムも消してしまって、時折車が水溜りを切る音をさせて、ずっとずっと遠くまで雨を見るように聴いて、雨音を聴くようにまぶたの中に見ながら、溶け合っていくくらいが丁度良い雨の日。

演奏会のお知らせ

ホームページの中の演奏会情報を更新いたしました。
http://miyamotoeiichiro.com/%e6%bc%94%e5%a5%8f%e4%bc%9a%e6%83%85%e5%a0%b1/

今年で46回(46年目!)を迎えるイタリア声楽曲を歌う演奏会に出演いたします。
今までに1500年代から20世紀ばでの、マドリガーレ、オラトリオ、オペラ、歌曲などをプログラムしています。

今年は19世紀後半から20世紀の作品群で、イタリア音楽史(=西洋音楽史)において重要な作曲家の素晴らしい作品が選ばれています。

僕はWolf-Ferrari ヴォルフ・フェッラーリの作品の中から4曲を歌います。
1つ1つは短い作品ですが、ユーモアたっぷりの、イタリアらしい曲です。

これら近代歌曲と呼ばれている作品群は、”華麗なるイタリアオペラ”とはまた違った輝きを持つものばかりです。
たくさんの人に聴いていただきたいです。
(下記フォームからお申込みいただけます。)

第46回 ムジカ・ノヴァンタ・ノーヴェ演奏会~芸術の薫り高いイタリアの名歌曲
出演 下村裕子 星川美保子 藤井美知子 中島郁子
相山潤平 佐野正一 森田学 宮本
ピアノ 髙木由雅

2018年7月19日(木) 18時開演 18:30開演 全席自由4,000円 学生券2,000円
ハクジュホール
千代田線 代々木公園駅 出口1
小田急線 代々木八幡駅 南口 より徒歩5分
渋谷駅西口ターミナルより10分 渋61,63,64,66,69

五月の陽の中で

この上なく美しい五月に、全てのつぼみが開く時、、、と始まるシューマンが作曲した歌があって、いつか歌ってみたい憧れをもつ。

僕はヨーロッパで五月を迎えたことがないけれど、幸いにもその季節の中にいた友人から聞くに、それはもう本当に詩にあるような美しい光景なのだという。シューマンの歌曲に憧れを持つのと同じ様に、花々の姿を目の当たりにしてみたい。

五月の初めに”テノール宮本英一郎のホームページ”は一周年を迎えた。続きを読む →

東フィル、フィデリオ終演

数日前に幕を閉じた《フィデリオ》演奏会形式に合唱の一人のとして参加した。

チョン・ミュンフン氏と東京フィルハーモニー交響楽団、東京オペラシンガーズとの組み合わせは結構久しぶりではないかと思うが、僕としては2007年のモーツァルト《イドメネオIdomeneo》、2009年のヴェルディ《レクイエム Requiem》以来である(と思う)。
その間に新国立劇場合唱団としても共演したけれど、やはりその音楽作りにいつも圧倒される。
三日間それぞれ違うホールでのコンサートは、国内外の一流ソリストによって素晴らしい演奏だった。合唱も併せて同じ感想を持っていただけたら嬉しい限りだけれども。最後の公演、東京オペラシティー、タケミツメモリアルホールの演奏後は、熱烈な拍手を受けた。
コンサートが終わりありがたいことに拍手を受けて、続きを読む →

須賀敦子と僕

たとえば、早春、イタリアの野に咲く薄黄色の花、primulaプリムラは、語源がラテン語であるというような面倒なことは、誰も覚えていないくらい日常的な名刺だけれど、たぶん、もとはprima(初めの)の縮小形だったのではないか、ちいさな、いとしい、春のはじまり。この花をなだらかな三月の丘の、陽あたりのいい斜面にみつけて、最初にこう呼んだ人の驚きや感動が、言葉の構造そのものに組み込まれているのがなにかうれしい。(須田敦子:時のかけらたち、より)

もちろんプリムラの季節はとっくに過ぎていて、すっかり緑で溢れかえった中を駆け抜ける風と、まぶし過ぎる陽に、これから訪れる初夏の匂いを感じる。

須田敦子との出会いは、僕がたまに寄る本屋の、写真関係の洋書の棚からレジへ進む最初の角に作られた、これまでの翻訳本、著作が平積みになっている所だった。実際はその本の角を避けようとして足が止まったからだ。続きを読む →