フランチェスコ・メーリ リサイタル

イタリアのテノール、フランチェスコ・メーリFrancesco Meliのリサイタルを聴きに行ってきた。(6月27日、紀尾井ホール)
日本では2009,2011,2015年にリサイタルをしており、今回が4度目。僕は2011年2月ぶりに彼の演奏を聴くことが出来た。

今回は大きなプログラムとして、ブリテンの《ミケランジェロの7つのソネット》を持ってきて、同じくイタリアのピアニスト、ルーカ・ゴルラLuca Gorlaと、イタリアのピアノメーカー、ファツィオリも加わり、よりイタリア色の強い舞台上だった。

プログラムは以下の通り。

ブリテン:〈ミケランジェロの7つのソネット〉より
“あたかもペンとインクで記したように”op.22-1
“お前の美しい眼によってやさしい光を見る”op.22-3
“美しい魂よ”op.22-7
B.Britten : 7 Sonnets of Michelangelo
“Si come nella penna e nell’inchiostro”
“Veggio co’bei vostri occhi un dolce lume”
“Spirto ben nato”

レスピーギ:霧 / 雨 / 雪
O.Respighi : Nebbie / Pioggia / Nevicata
プッチーニ:すてきな夢 / 進め、ウラニア!
G.Puccini : Sogno d’or / Avanti, Urania!
トスティ:子守唄 / 理想 / 最後の歌
F.P.Tosti : Ninna nanna / Ideale / L’ultima canzone
ヴェルディ:《イル・トロヴァトーレ》より”ああ、いとしいわが恋人よ”
G.Verdi : «Il trovatore» “Ah si, ben mio”
チレーア:《アドリアーナ・ルクヴルール》より”君の優しく微笑む姿に”
F.Cilèa : «Adriana Lecouvreur» “La dolcissima effigie”
ヴェルディ:《シモン・ボッカネグラ》より”何たることだ!アメーリアがここに!”
G.Verdi : «Simon Boccanegra» “o inferno! Amelia qui!”

東京プロムジカHP参照

イタリアを拠点に活動する友人からピアニストが素晴らしい、と聞いていたのでそれも大きな楽しみの一つだった。
その演奏は、とても抽象的な表現だけれど、ピアノがまるでイタリア語を喋ってる様で、明るく、多彩で、瑞々しい音楽を奏でていて、特にレスピーギのお天気三部作(僕はこう呼んでいる。。。)は、胸が熱くなり、音をしっかりと抱きしめたくなった。
学生の頃はオペラは好きだったけれど、もっぱらイタリアの歌曲を良く歌っていて、今本棚にある楽譜を眺めても、誰もが知っている曲でもないのによく勉強していたなぁと感心する。来日するイタリア人歌手にもっとイタリアの歌曲、とりわけ近代以降のものをたくさん歌って欲しいと思っているのはきっと僕だけではないだろうな、と想像する。

もちろん主役のメーリも素晴らしく、とても真摯な演奏を聴かせてくれた。声の響きの高さには本当に驚くばかりで、先日聴いたサイミール・ピルグともまた違うイタリア人特有の輝かしさが、やはりあぁこれを求めていたんだ、と再確認した。最近の僕の仕事は、ドイツ人によるドイツ語作品の素晴らしさに触れることが多かったために、滴がしたたり落ちるほどの“純”イタリアの声は久し振りだった。
終演後、友人のツテで楽屋に案内してもらい、ちゃっかり写真を撮ってもらった。

今回歌ったブリテンや、前回(2011年)不満だったリストの《ペトラルカの三つのソネット》も収録されているCDも購入し、これは後からゆっくり聴きたいと思う。

イタリア歌曲のコンサートの前にとても良い「聴く」勉強ができ、またさらに歌いこまなければ!と気合が入ります。

ノヴァンタノーヴェ演奏会のチケットもまだまだ受け付けておりますので、ぜひご用命くださいませ。

夏至

今日の空は僕が住むところでは曇りであったので、赤い日没を眺めるというのはかなわなかったけれど、時間を錯覚するほど何だかいつまででも明るい気がして街を歩いていた。
夕方の空は、淡い水彩画を描いた後の筆洗いの水の様に思えた。ちょっと湿り気もあって、雲が太陽からいろんな色を盗んで自分たちだけで楽しんでいるみたいだった。
僕は小学生の頃、図工の時間の後の黄色い筆洗いのバケツが何だか好きで、描き終わった後の満足感と摩訶不思議な色合いと澱みに見入っていて、それを同じ流し場でクラスメイトのものと混ざり合って流れていくのはまたこれも楽しかったように思う。

昔、イタリアのシエナで夏を過ごした時は(それは8月だったから今時分ではないけれど)、随分遅くまで明るくて20時を過ぎてようやく空が紅く染まり、薄暗い光の室内から聖アゴスティーノ教会のシルエットをもったいぶって空に残しているのを見ていた。それから闇が下りてくるのは早くて、あんなに昼間は空が青いのに夜はとても深いのは不思議なもんだと覚えている。

いつでも空の記憶はあるけれど、思い立って書き出してみるのも面白い。

「夏至」というきれいな映画があったと思う。鮮やかで潤いのある色彩を覚えている。また観たい。

雨の日

雨の日は好きだ。

傘に打つ雨の音が、隣りを歩く人のそれと重なって分からないくらいの強さが丁度良い。

雨が降る前に立ち込めた湿度が洗い流されて、少し汗ばんだ肌に雨粒が溶け合うくらいが良い。

雨の日は、気づかずに通り過ぎたくちなしのかおりを届けて、見つけた小道にきれいな青色の紫陽花と深い緑の葉があるのを教えてくれる。

雨の夜は耳元に静かな絵画を描くようで、ベランダの手すりから落ちる雨音、隣の庭木に打つ雨音、ずうっと高いところから流れてくる雨のままの音。

機械式の時計のリズムも消してしまって、時折車が水溜りを切る音をさせて、ずっとずっと遠くまで雨を見るように聴いて、雨音を聴くようにまぶたの中に見ながら、溶け合っていくくらいが丁度良い雨の日。

演奏会のお知らせ

ホームページの中の演奏会情報を更新いたしました。
http://miyamotoeiichiro.com/%e6%bc%94%e5%a5%8f%e4%bc%9a%e6%83%85%e5%a0%b1/

今年で46回(46年目!)を迎えるイタリア声楽曲を歌う演奏会に出演いたします。
今までに1500年代から20世紀ばでの、マドリガーレ、オラトリオ、オペラ、歌曲などをプログラムしています。

今年は19世紀後半から20世紀の作品群で、イタリア音楽史(=西洋音楽史)において重要な作曲家の素晴らしい作品が選ばれています。

僕はWolf-Ferrari ヴォルフ・フェッラーリの作品の中から4曲を歌います。
1つ1つは短い作品ですが、ユーモアたっぷりの、イタリアらしい曲です。

これら近代歌曲と呼ばれている作品群は、”華麗なるイタリアオペラ”とはまた違った輝きを持つものばかりです。
たくさんの人に聴いていただきたいです。
(下記フォームからお申込みいただけます。)

第46回 ムジカ・ノヴァンタ・ノーヴェ演奏会~芸術の薫り高いイタリアの名歌曲
出演 下村裕子 星川美保子 藤井美知子 中島郁子
相山潤平 佐野正一 森田学 宮本
ピアノ 髙木由雅

2018年7月19日(木) 18時開演 18:30開演 全席自由4,000円 学生券2,000円
ハクジュホール
千代田線 代々木公園駅 出口1
小田急線 代々木八幡駅 南口 より徒歩5分
渋谷駅西口ターミナルより10分 渋61,63,64,66,69

五月の陽の中で

この上なく美しい五月に、全てのつぼみが開く時、、、と始まるシューマンが作曲した歌があって、いつか歌ってみたい憧れをもつ。

僕はヨーロッパで五月を迎えたことがないけれど、幸いにもその季節の中にいた友人から聞くに、それはもう本当に詩にあるような美しい光景なのだという。シューマンの歌曲に憧れを持つのと同じ様に、花々の姿を目の当たりにしてみたい。

五月の初めに”テノール宮本英一郎のホームページ”は一周年を迎えた。続きを読む →