部屋の壁に掛けてあるカレンダーは月めくりで、季節にちなんだ生け花の写真に俵万智の短歌が書かれている。
12月は
12という数字やさしき真夜中に
君の声聞くために生きている
(サラダ記念日/モーニングコール)
単純に”12という数字”だったり、”やさしき真夜中に”がクリスマスや除夜の鐘を彷彿とさせるだろうか。もしかしたら忙しい最中にやっと会えた恋人同士の語らう真夜中のひと時かもしれない。声に出して読んでみると師走の慌ただしい心を不思議なほどなだめてくれる。
この歌を見た瞬間、”君の声”の”君”がベートーヴェンと連結されてしまって、これから始まる第九のシーズンを前にあぁなんだか職業病なのかな、と僕は思ってしまった。”第九”の合唱を毎年歌う機会に恵まれ、特段この時期だけでなくなった最近でも、やはり12月末にかかると身が引き締まる。
演奏する度に二度として同じ条件はないのは当然であるけれど、ベートーヴェンの書いた音楽はずっと昔から変わらずにある、というのが音楽の妙なところだ。
今年はどんなことをベートーヴェンがどんな声で語りかけてくるのだろうか、しっかりと受け止められる様に楽譜と、音そのものに心を寄せて過ごしていこう。