翼を持ちて

先週末の土曜日、Operaliaというコンクールの本選をインターネット中継で観た。
プラシド・ドミンゴ国際オペラコンクールという名前で25年前から行われていて、いつの間にやらOperaliaという洒落た名前がついている。「オペラ」と、オペラの中で一人で歌われる「アリア」、そして翼という意味のイタリア語の古い言い方「alia」をかけていて、オペラの翼とでも言ったらいいのだろうか。

それぞれの歌手のバックグラウンドは分からないが、もうすでにキャリアを十分に積んでいて、更なる高みを目指す歌手、これから世界の扉に手をかけようとする歌手と、様々であろう。年齢も20代前半から30歳までとわりに幅広く、文字通り世界中から集まっていて、セミファイナルでは日本人の加藤のぞみさんが素晴らしい歌を歌われていた。
ちなみに今年の1位は女声部門でAdela Zahaide,Soprano(ルーマニア)男声では Levy Sekgapapane,tenor(南アフリカ)が受賞した。
この2人に限らず、ファイナル、セミファイナルに出場した歌手(だけではないのはもちろん)が世界の檜舞台に立つ日はもうすぐそこだ。

その次の日の朝だったか、仕事へ向かっていると通りかかったマンションの駐車場から
10羽以上の燕が一斉に羽ばたき、僕の頭上で乱れつつも勢いよく旋回していた。
巣に戻ろうとするが、そうはせずにまた大きく円を描いてさっきよりも高く昇り旋回を繰り返す。
東京ではきっと最後の燕だ。
あんなにもたくさんの旅立ちを見たのは初めてだった。
飛び方を覚えたてであるけれど、今飛び立つというあの勢いはこの時にしか感じられない大きなエネルギーを持っている。
世界へ羽ばたく彼らの歌は、ステージで毎日歌われている歌にはない可能性という瑞々しさが含まれていた。
それは選ばれた人だけが持つものなのだろうか。
どこでどんな歌を歌おうが、自分の中に可能性や新鮮さ、瑞々しさを感じよう、
と飛び立つ燕を眺めながら大きな希望と少々のセンチメンタルを感じたのだ。

eiichiro
テノール歌手の宮本英一郎です。 演奏活動を通して、たくさんのことを皆様と共感出来たらと思っております。 演奏会のご依頼等ありましたらコメントからご連絡くださいませ。メール環境が整いましたら移行いたします。

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